冬木さんの洞窟

2004-11-12

[]幻想的作品のための10のお題より『砂漠の夢』


 それは、半ば夢の中を旅しているような日々だった。

 くる日もくる日も、乾いた砂をさらさらいわせて風が吹き抜けるばかりの剥き出しの大地を、里菜とアルファードは、ただふたり、黙って馬を進めた。

 静かな旅の中で、ただ、ときおりアルファードが、ぽつりぽつりと、この荒野にまつわる伝説などを教えてくれた。

 伝説によると、かつてここは、一年のほとんどを雪と氷に閉ざされた凍土の平原だったが、短い夏には花々が一斉に咲き競い、羽虫たちが飛び交い、獣たちが駆け巡ったと言う。

だが、魔王が凍土のさいはてに城を構えて以来、魔王の憎しみが邪悪な熱となって雪と氷を溶かし、雨も雪も一切降らなくなって乾いた風だけが吹き続け、それまでは寒さのためにいつまでも蒸発しなかった湿地の水でさえやがて干上がり、草も苔も枯れ、鳥も獣も死に絶えて、いつしかこんな岩砂漠になってしまったのだそうだ。

 そんな、生命の気配のない荒野で、あるとき、ふたりは、遠い地平線を、巨大な角を持つ大鹿の群れが幻のように駆け抜けていくのを見た。その時、ほんの一瞬だけ、行く手の大地が緑の苔と小さな花々で覆われているように見えたが、その後、いくら馬を進めても、それまでと同じ乾いた荒れ地がどこまでも続いているばかりだった。

 また、あるときは、明け方のまどろみの中で、何頭もの狼たちが遠吠えを交わすのを聞いたが、翌朝、念のために探してみても、狼の足跡を見つけることはなかった。

 野営の準備をしている時に、ふと、かたわらの地面に目を落すと、そこに小さな灰色の兎がいて、鼻をぴくぴくさせてこちらを見上げていたこともあった。けれど目をしばたたいてもう一度見直すと、兎は跡形もなく消え失せていた。

「大地が、過ぎた日の夢を見ているんだ」と、アルファードは言った。「君がここに足を踏み入れたことで、大地の奥深くで、遠い記憶が動き始めたんだ」

 そんなアルファードの言葉に、里菜は何も問い返さず、素直に頷くことができた。


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以上、ごめんなさい、書き下ろしじゃなく有りモノ利用です。

サイト連載中の拙作『『イルファーラン物語』の、まだ公開していない第四章『荒野の幻影』からの、一部抜粋です。

きんとさんの同様、ここも、砂砂漠ではなく砂礫砂漠です。

で、こちらは、実は北方の高緯度地帯の、もとは凍土だった土地です。


どうも私は、自分が好きなものと自分で書いているものに微妙なギャップがあるようで、本当は幻想的なものが大好きなのに、自分が書いているものは、一応異世界ファンタジーであるわりに、なぜか非常に幻想度が低いのです。

神秘や幻想より、生活感のある日常や月並みな人間関係がメインで、魔法もドラゴンも存在はするけれど、それらはその世界ではぜんぜん神秘ではなく、日常の生活技術や大型野生動物に過ぎず、ドラゴン退治は害獣退治に過ぎません。


別に自分の書いているものが嫌いなタイプだというわけではなく、『好きなものの一つ』ではあるのですが、『一番好きなもの』ではないようです。


そんな中でも、時々、やっぱり、自分の本来の趣味である幻想的なシーンはところどころに挿入されていて、自分では、そういう部分を書くときには、ひときわ楽しんでいるのですが、でも、やっぱり、こうして改めて抜き出してここに持ってくると、さほど幻想的でもないかも……(^_^;)

きんときんと2004/11/16 18:20『イルファーラン』にこんな乾いた風景も出てくるのですね~。読むのが楽しみです。
私も自分の書くものは幻想度が低いなーとつくづく思います。冬木さんと同じく、書きたいものが「人間」だからなんでしょうね。
それに神秘や幻想も好きなんだけど、なぜか「それは如何にして?」なんて追求に走ってしまって、どんどん幻想から離れてしまうのですよ。性格的に地に足がついてないと落ち着かないからかな。星座の属性は「地の宮」ですが。。。(^o^;

冬木洋子冬木洋子2004/11/17 08:51コメントありがとうございます!『如何にして』を追求すると幻想から離れてしまう気持ち、分かります!他人が書いたものを読む時は理屈ぬきで幻想に浸れても、いざ自分で書こうとすると『そういえば、如何にして?』と、中途半端に理性が頭を持ち上げてしまい、幻想的になりきれないんでよすね。そこをとことん理性的に追求すれば、それはそれで、理路整然とした魔法体系や緻密なSF的設定を生み出せたりするのかもしれませんが、私の場合、如何せん中途半端なので何の役にも立ちません(^^ゞところで私は乙女座ですが、乙女座って『地の宮』ですか?あと血液型がO型なんですけど。よくO型は現実的だっていいますよね。

きんときんと2004/11/17 18:36おお、冬木さんも乙女座ですか。私もです(^_^)「地の宮」は牡牛座、乙女座、山羊座です。やはり地に足がついていないと落ち着かない人々のグループですねf(^o^;

EllyannaEllyanna2011/10/01 18:43You've really captured all the essenitlas in this subject area, haven't you?

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