冬木さんの洞窟

2005-03-05

[]夢の旅


おひさしぶりです。

あまりにも久しぶりなので、またしても、はてなダイアリーの使い方を忘れてしまいました……(^_^;)


今日は、自分が子供の頃から心の中に抱いているあるイメージの話をしに来ました。

なんか幻想的な話題のような気がするので。


それは、あまりにも漠然としていてつかみ所が無く、言葉に出来ない感覚的なイメージなのですが、あえて言葉という型に押し込んでみると、『知らない男の人に連れられて、薄暗くて肌寒い寂しい夢の中をどこまでも旅している』というイメージです。

本当は、そんなはっきりした言葉で表せるようなものではなく、もっと漠然としたイメージなので、言葉にしたとたん、何かちょっと違ってしまうような気もするのですが、とにかく言葉にしないと説明できないので……。


これが、何か本で読んだとか絵で見たとかの出所があるイメージなのか、夢に見た光景なのか、単なる想像なのか、それとも生まれる前の記憶か何かなのか(笑)、定かではないのですが、とにかく、自分の中にずっと前からそのイメージが存在しているのです。


その夢(便宜上、『夢』と呼ぶことにします)のなかで、私は、どこか、薄暗い、肌寒い、夜の海辺のような寂しいところを、知らない男の人につれられて旅しているらしいんです。

そこは、たぶん、決して朝が来ず、日が昇ることがない、時の流れを知らない永遠の薄闇の国なのです。時間は無いけれど、もしも季節があるとしたら、たぶん、春です。まだ肌寒い、早春のイメージです。


暗い海は進行方向右手にあって、男の人は左手にいるようです。

男の人は、黒っぽい服を着ているような気もするし、黒い翼が生えていて空を飛んでいるような気もするし、姿が無いような気もします。

いずれにしても、私の目には姿がはっきり見えず、漠然と存在感だけが隣り合っている感じで、口もききません。


その人と、少し離れて歩いているような気もするし、手を引かれているような気もするし、抱えられて空を飛んでいるような気もします。

私のほうは、もし姿があるとしたら、たぶん小さな子供の姿なんですが、私も姿が無い、肉体が無い状態であるような気もします。


思い出せるのは、とにかく、漠然とした『雰囲気』だけで、男の人は誰なのか、私たちはなぜ旅をしているのか、どこに向かっているのかなど、具体的な事情は全く分かりません。


そんなわけで、あまりも漠然としていて、全く説明が出来ないし、それがどんな情景なのかもはっきりしないのですが、そのときの、ちょっと寂しいような、悲しいような、不安なような、でも懐かしいような気分と、その場の薄暗さは、ずっと前から、とても鮮明に心の底に沈んで、私の原風景のようなものの一つになっています。


『ずっと前から』というのがいつ頃からかも分からないのですが、小学校の高学年か中学校の頃、西条八十の『つくしんぼう』という詩を読んだ時に、(この詩は私のあの夢に少しだけ似てる)と思ったことを覚えているので、それより昔からなんだと思います。


西条八十の『つくしんぼう』という詩は、うろ覚えなのですが、『見知らぬ人』に負ぶわれて春の野山を越えた思い出を歌った詩です。

おんぶされているのだから、主人公は幼子だったのでしょう。

それは、『いずこの国かいつの日か』も分からない遠い思い出で、『見知らぬ人』は黒マントを着ていて、主人公は、その背中から眺めたつくしんぼうのことは断片的な光景として覚えているらしいのですが、なぜ旅をしていたか、その男は誰なのかといった事情は、全く説明されていません。

本当にあったことなのかも定かでない、あいまいな夢のような思い出なのです。


その、夢なのか現実の記憶なのか分からないあいまいさと、黒マントの見知らぬ男の人の存在感、春の季節感が、私のあの夢のイメージに通じるのです。


目が覚めているときに『夢』の中の事情をあえて想像してみると、もしかすると、あの『夢』の中で、あの暗い荒涼の海辺は、この世とあの世のあいだの境界世界で、幼子の姿の私はまだ生まれていない存在で、翼ある案内人に導かれてこれから生まれ出るためにこの世への旅をしているのかもしれないし、あるいは、既に死んで魂だけの存在になって、あの世へ旅している途中なのかもしれないと思います。


私は、この薄暗い夢の旅のイメージを、作品の中に、何度も反復して取り入れています。

前に、ここに掲載させてもらった『イルファーラン物語』の一節『砂漠の夢』のシーンにも、このイメージが部分的に取り入れられていました。

一緒にいるのは『知らない男の人』じゃないし、服装も黒っぽくないし、荒野は薄暗くないし、海辺じゃないし、時間感覚は麻痺してるけど一応は朝になれば日が昇るし……なので、ほんとうに、ごく部分的になのですが。

同作品の中には、他にも、もっと色濃くこのイメージを取り入れたシーンがあります。


皆さんにも、そういう、『心の中に大事にしまってあって何度でも書かずにはいられない自分の原風景みたいなイメージ』って、ありませんか?

もしあったら、披露してくれると嬉しいです。



[]長野まゆみ


以前、こちらで話題になったのをきっかけに、長年気になっていたのになぜかまだ一冊も読んでいなかった長野まゆみを読みました。

とりあえず、めぃさんに教えていただいた『上海少年』『銀木犀』『少年アリス』を。

思ったとおり、とっても好みでした。読んでみてよかったです。

この三冊の中では『少年アリス』が一番好みだったかな?

めぃさん、ありがとうございました。


ここでの話題が、ちょうど良いきっかけになって、読書の範囲が広がりました。

こういう交流って、いい刺激になりますね。